中古トラック業界・市場の動向
中古トラック市場はここ数年、かつてない変化に直面しています。新車の供給不足による相場の高騰、海外輸出の拡大、そして商用車の電動化の波。いずれも事業者の車両調達や売却判断に直結する要素です。
日本の中古トラック市場は2025年に約14億米ドル(約2,100億円)規模に達し、年平均約3.9%の成長が2034年まで続くと予測されています(IMARC Group調べ)。しかし「市場が拡大している」という数字の裏側では、購入側にとっては価格高騰という厳しい現実があり、売却側には輸出・EV化という新たな変数が加わっています。
本記事では、中古トラック業界の「いま」と「これから」を、相場高騰の背景、輸出とEVが与える影響、今後の見通しの3つの軸で整理します。
中古トラック市場の「いま」:需給構造の変化
中古トラック市場を動かす最大の要因は、新車市場の供給制約です。2020年以降、新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの混乱、半導体不足、部品調達難が続き、国内トラックメーカーの新車生産は大きく制限されました。新車の納期が半年から1年以上に及ぶケースも珍しくなく、事業者は必要な車両を中古市場に求める流れが加速しています。
さらに2022年には、日野自動車のエンジン認証不正問題により一部車種の出荷が停止。国内トラック市場の約3割を占める日野の供給が滞ったことで、中古市場の需給は一段と逼迫しました。2024年秋に生産再開の見通しが立ったものの、供給が正常化するまでにはなお時間を要するとみられています。
需要面では、EC(電子商取引)の拡大による物流需要の増加が底堅く、建設需要も都市再開発やインフラ更新を背景に堅調です。加えて、2024年4月から適用された「働き方改革関連法」による時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」への対応として、輸送効率を高めるための車両増強・刷新の動きも中古需要を押し上げています。
相場高騰の背景:なぜ中古トラックは高くなったのか

中古トラックの価格は、2020年を境に明確な上昇基調に入りました。大型トラックを例にとると、2020年時点で500万〜800万円程度だった高年式・低走行の人気車種が、2023年には800万〜1,200万円に達する例も報告されています。この価格高騰には、以下の複合的な要因が重なっています。
新車価格の上昇。鉄鋼・レアメタルなどの原材料費高騰と円安の進行により、トラックの新車価格はこの5年で2〜3割上昇しました。大型トラックの新車価格が2,000万円を超える現在、中古車の割安感は相対的に強まり、価格の下支え要因となっています。
環境規制への対応コスト。平成28年排ガス規制や、その後の燃費基準強化により、規制適合車両の開発・製造コストが上昇。新車に搭載される安全装備(衝突被害軽減ブレーキ等)の義務化も価格を押し上げ、結果として「割高な新車を避けて中古へ」という流れを強めました。
供給の絶対量不足。前述の新車出荷遅延により、事業者が車両を長く使い続ける傾向が強まり、中古市場に良質な車両が出回りにくくなっています。とくに4〜7年落ちの「狙い目」とされる年式帯の在庫は慢性的に不足しており、流通量そのものが減少しています。
これらの要因が重なり、中古トラックの価格は「一時的な高騰」ではなく「構造的な高止まり」へと移行しつつある点が、今回の局面の特徴です。
輸出市場の拡大:国内在庫を奪い合う構図

日本の中古トラックは、品質の高さと整備状態の良さから海外で高い人気を誇ります。主な輸出先は東南アジア、アフリカ、中東、南米などで、とくにフィリピンやミャンマー、ケニア、パキスタンなどでは日本製中古トラックが物流・建設の主力として活躍しています。
輸出の拡大が国内市場に与える影響は二面性があります。売却側(事業者・販売店)にとっては、海外バイヤーの存在が下取り価格を押し上げ、高値での売却機会を生みます。一方、購入側にとっては、輸出業者が国内オークションで積極的に買い付けを行うため、国内向けの良質な在庫が海外に流出し、品薄と価格上昇を助長する要因になっています。
とくに影響が大きいのは、小型・中型トラック(2〜4トンクラス)の輸出需要です。東南アジアを中心に、日本の中古小型トラックは現地の道路事情や経済規模に合致し、根強い需要があります。輸出が好調な局面では、このクラスの国内在庫がとくに逼迫する傾向があります。
また、日本の排ガス規制に適合しない旧規制車両でも、規制の緩い輸出先では十分な商品価値を持つため、国内では買い手が付きにくい車両が輸出ルートで高値取引されるケースもあります。この「輸出価格」が国内中古相場の底値を形成している面も見逃せません。
EVシフトの波:中古トラック市場に何をもたらすか
商用車の電動化は、乗用車に比べて緩やかに進んでいます。2026年現在、国内で実用化されている電動トラックは、小型の配送用EVトラック(いすゞ「エルフEV」、三菱ふそう「eCanter」、日野「デュトロZ EV」など)が中心で、大型長距離トラックの電動化は水素燃料電池も含めて開発段階にあります。
中古トラック市場への影響は、短期的には限定的ですが、中長期的には以下の変化が想定されます。
ディーゼル車の輸出需要は当面堅調。新興国では充電インフラが未整備であり、ディーゼルエンジン車の実用性は今後10年以上続くとみられます。そのため日本の中古ディーゼルトラックへの輸出需要は、EV化とは別の軸で維持されるでしょう。
国内では規制リスクが価格に織り込まれる。東京都をはじめとする自治体のZEV(ゼロエミッションビークル)義務化や、2030年代のディーゼル車販売規制の議論が進むなか、規制対応が遅れた車両は将来的な使用制限リスクから価格が下落する可能性があります。すでに平成28年排ガス規制非適合車は、一部地域の通行規制の対象となるなど、規制の影響は顕在化しつつあります。
ハイブリッド車・低燃費車の中古価値は上昇。燃費性能に優れた車両や、アイドリングストップ機能搭載車は、燃料費の高止まりを背景に中古市場でも選好されています。EVへの過渡期において、燃費の良いディーゼル車・HV車の相対的な価値は当面高いとみられます。
事業者にとっては、「いま買うディーゼル中古車を何年使うか」という時間軸がこれまで以上に重要になっています。少なくとも向こう5〜7年はディーゼル中古車が主力であり続けるとみられますが、10年以上の長期使用を想定する場合は、規制動向を注視する必要があります。
今後の見通し:事業者が押さえるべき3つのポイント

短期的には価格の高止まりが続く
新車供給の正常化にはなお時間がかかり、物流・建設の需要も底堅いことから、2026〜2027年にかけて中古トラックの価格が大きく下がる可能性は低いとみられます。とくに4トン以下の小型トラックと10トン超の大型ウイング車は、需給の逼迫が続くでしょう。
中期的には「選別」の時代へ
2028年以降、日野の供給正常化や新車増産効果が浸透すれば、中古市場の供給量は緩やかに回復に向かうと予想されます。ただし、その回復は車種・年式によって濃淡があり、規制対応が進んだ高年式車と、旧規格の低年式車との価格差は拡大する見込みです。「選べる中古市場」から「選別される中古市場」への移行が進むでしょう。
輸出とEVがつくる新たな価値軸
輸出の好調は国内在庫の減少要因であり続け、EV化の進展は中古ディーゼル車の将来価値に不確実性をもたらします。事業者にとっては、購入時に「この車両を5年後に売却する際、輸出市場でいくらになるか」「電動化の規制が自社の運行地域にどう影響するか」を考慮する視点が、これまで以上に求められます。
また、リセールバリューを見据えたメーカー選び(輸出先での人気ブランドは日野・いすゞが強い)、整備記録の保管(輸出査定で高評価につながる)、排ガス規制適合グレードの選択など、出口戦略を意識した車両選定が資産管理の観点からも重要になっていくでしょう。
まとめ:情報を持って動く時代へ
中古トラック市場は、「安く買える代替市場」から「需給・規制・国際市況が複雑に絡み合う戦略市場」へと変化しています。相場高騰の背景には新車不足・円安・規制強化という構造要因があり、輸出の拡大とEVシフトはこれからの市場を左右する大きな変数です。
こうした環境下では、「いま市場にどんな車両が、いくらで出ているか」をリアルタイムに把握することが、適切な判断の第一歩になります。トラックバンクでは、ボディタイプ・メーカー・クラス・地域別に中古トラック在庫を検索でき、車両ごとの価格相場や販売店情報も確認できます。購入はもちろん、まずは市場価格のリサーチとしてもご活用ください。
- 中古トラック在庫検索:https://www.truck-bank.net
- 中古トラック価格相場:https://www.truck-bank.net
- 中古トラック買取情報:https://www.truck-bank.net
参照元
参照元: IMARC Group「Japan Used Truck Market Report 2026-2034」/一般社団法人日本自動車工業会「普通トラック市場動向調査」/国土交通省「自動車排出ガス規制の経緯」/日野自動車「エンジン認証不正問題に関する特別調査委員会報告書」