高所作業車とは・用途・選び方
高所作業車とは、作業床(バスケット)が 2m 以上の高さまで上昇でき、人力以外の動力で昇降し、不特定の場所を自走できる特殊車両の総称です。建設・電気・通信・造園・設備メンテナンスなど幅広い現場で、足場を組まずに高所作業を安全かつ効率的に行うために使われます。本記事では、構造と仕組みから用途、中古購入時のチェックポイント、相場感までを解説します。
高所作業車の定義と構造
高所作業車は、厚生労働省令(安衛令第10条ほか)により、次の3要件で定義されています。
- 作業床が 2m 以上に上昇できる
- 昇降に人力以外の動力(油圧・電動など)を使用する
- 不特定の場所へ自走できる
この3要件を満たさず、自走できないものは「高所作業台」として区別されます。トラックに架装された「トラック式」が公道走行できるのに対し、ホイール式やクローラ式は敷地内の自走に限られます。
基本構造
高所作業車は大きく「走行装置」「昇降装置(ブーム・マスト)」「作業床」の3要素で構成されます。
- 走行装置: トラックシャシ(トラック式)、ホイール(タイヤ式)、クローラ(キャタピラ式)のいずれか。
- 昇降装置: 作業床を目的の高さ・位置に運ぶ機構。ブーム型は油圧シリンダで伸縮・屈折し、垂直昇降型はマストやシザースリンクで上下する。
- 作業床: 作業員が乗るバスケット部分。手すり・安全帯フックを備え、ブーム式では作業床の水平を自動で保つ平衡装置が組み込まれている。
また、トラック式では車両を安定させる アウトリガー(張り出し脚)が架装されており、作業時には必ず張り出して接地させます。

昇降機構の種類と特徴
高所作業車は作業床をどんな動きで目的位置に届けるかで分類され、現場の作業半径や障害物の有無によって選択が変わります。
ブーム式
ブーム(腕)を伸縮・屈折させて作業床を動かす方式です。
- 伸縮ブーム型(直進ブーム型): ブームがまっすぐ伸び縮みする。高所への直線的なリーチに強く、電線工事や街路灯メンテナンスなど比較的高い位置での作業に向く。
- 屈折ブーム型: ブームに関節があり折れ曲がる。障害物の上や奥へ回り込む動きが得意で、看板裏や建造物の凹凸のある面の作業に適する。
- 混合ブーム型: 伸縮と屈折の両方を備える。作業半径が広く、1台で多様な現場に対応できる。

垂直昇降型
作業床が真上に昇降する方式です。構造がシンプルで、作業床の揺れが少なく安定しています。
- シザース型: パンタグラフ状のリンクで昇降。作業床が広く、内装工事や設備据付など水平面での作業に適する。
- マスト式: 垂直に立つマストで昇降。コンパクトな機種が多く、屋内の狭隘スペースにも入りやすい。
走行方式による分類
現場への移動手段と路面適性で選ぶ方式です。
| 方式 | 特徴 | 主な現場 |
|---|---|---|
| トラック式 | トラックシャシに架装。ナンバー登録あり、公道走行可。移動が速く工期の短い現場に有利 | 電気・通信工事、道路標識、街路樹整備 |
| ホイール式(タイヤ式) | ゴムタイヤで自走。舗装面に跡が付かないノンマーキングタイヤも選択可。公道走行不可 | 倉庫・工場内、建設現場、造船所 |
| クローラ式 | キャタピラで不整地・軟弱地盤を走行。ゴム製とスチール製があり、ゴム製は路面を傷めにくい | 造成地、農地、山林、災害復旧現場 |
動力方式
動力源の違いも選択の重要な要素です。
- エンジン式(ディーゼル主流): 出力が大きく大型機に向く。排ガス・騒音があるため屋外向き。
- バッテリー式: 静かで排ガスゼロのため屋内作業に最適。稼働時間は数時間で、充電に 8〜12 時間程度かかる。
- バイエナジー式: エンジンとバッテリーの両方を搭載し、屋外はエンジン、屋内はバッテリーと切り替えて使える。
高所作業車の主な用途と向く業種
高所作業車は足場仮設の手間とリスクを大幅に減らせるため、以下の現場で広く使われています。
| 用途 | 具体的な作業例 | 適するタイプ |
|---|---|---|
| 電気・通信工事 | 電線・引込線の敷設・保守、変圧器交換 | トラック式(伸縮・屈折ブーム) |
| 道路設備 | 信号機・街灯・標識・道路照明の設置・保守 | トラック式(伸縮ブーム) |
| 建設・建築 | 外壁塗装・防水・シーリング、鉄骨耐火被覆 | 自走式(屈折・混合ブーム)、シザース |
| 設備メンテナンス | 空調・ダクト・配管の点検修理、蛍光灯交換 | 自走式(垂直昇降・マスト式) |
| 造園・街路樹 | 剪定・伐採、高木の消毒 | トラック式(屈折ブーム) |
| 物流・引越 | 高層住宅への家財搬入・搬出 | トラック式(屈折ブーム) |
| イベント・撮影 | 舞台設営、照明設置、映画の俯瞰撮影 | 自走式(屈折ブーム) |
中古の高所作業車を選ぶ際のチェックポイント
中古で購入する場合、トラック部分(走行装置)と架装部分(昇降装置)の両方を確認する必要があります。走行距離だけで判断せず、以下の点に注目します。
架装の劣化と油圧系統
- ブームのサビ・歪み: 塗装の剥がれや表面サビだけでなく、ブームの継ぎ目やピン結合部に深い腐食がないか。歪みや修理痕がある個体は使用中の事故リスクが高いため要注意。
- 油圧ホース・シリンダの漏れ: ブームを実際に動作させ、作動油のにじみ・漏れがないか。ホースのひび割れや劣化は交換コストに直結する。

- アウトリガーの動作: 張り出し・格納がスムーズか。張り出し時のガタつきや油漏れがないか確認する。
年式と稼働時間
- トラック式の場合、走行距離に加えて PTO 稼働時間(架装の使用時間) が重要。PTO 時間が長い個体は架装の消耗が進んでいる可能性が高い。
- 一般的に高所作業車の架装部分は 10〜15 年程度で主要部品の交換時期を迎えることが多く、購入後のメンテナンス計画に年式を考慮する必要がある。
メーカーと整備体制
国内の主要架装メーカーは アイチコーポレーション(スカイマスター)、タダノ(スカイボーイ)、古河ユニック、加藤製作所などです。中でもアイチとタダノはシェアが大きく、中古市場でも流通量が多く選択肢が豊富です。タダノは全国に300か所以上の指定サービス工場と900名以上の認定サービスマンを擁しており、アイチコーポレーションも全国に営業サービス拠点を展開しています。購入前に最寄りのサービス拠点や部品の入手性を確認しておくと安心です。
資格と法規対応
高所作業車の操作には、作業床の高さに応じて 「高所作業車の運転の業務に係る特別教育」 または 「高所作業車運転技能講習」 の修了が必要です(10m 未満は特別教育、10m 以上は技能講習)。公道を走行するトラック式は、運転する車両の大きさに応じた運転免許も必要です。
中古高所作業車の相場感
中古のトラック式高所作業車の価格は、年式・走行距離・作業高さ・架装の状態により大きく変動します。おおまかな目安として、以下の価格帯が一般的です。
- 10年落ち以上・作業高さ 10m 級: 100万円台〜300万円台
- 5〜10年落ち・作業高さ 12〜15m 級: 300万円台〜600万円台
- 5年未満・作業高さ 15m 以上: 600万円台〜1,000万円超
作業高さが上がるほど、またブームが混合型や大型になるほど価格は上がります。バッテリー式・バイエナジー式は同クラスのエンジン式より割高になる傾向があります。実際の在庫と価格は日々変動するため、購入時には在庫検索サイトで最新の掲載情報を確認することをおすすめします。

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参照元
- 厚生労働省「高所作業車の運転の業務に係る特別教育」: https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001006496.pdf
- 日本建設機械工業会「高所作業車」: https://www.cema.or.jp/general/industry/machines/aerialworkplatforms.html
- 高所作業車構造規格(労働安全衛生規則第10条ほか)
- アイチコーポレーション 公式サイト「サービス拠点」: https://www.aichi-corp.co.jp/company/bases/bases_service
- タダノ 公式サイト「サービス体制」: https://www.tadano.com/japan/service/nintei/